日本の医療機関の経営状況は全体的にはあまり良いとは言えず、高齢化に伴い医療費の抑制が進められていることもあり、病院の経営は今後さらに厳しい状況になることが予測されます。医療従事者の人材不足も深刻です。増え続ける患者に対して医療に従事できる医師や看護師の数が不足しています。過重労働を強いられる医療従事者も多く、貴重な人材の休職や離職も大きな懸念となっています。
これらの困難に直面した病院や医療施設は、それらを克服するための計画を立てる必要があります。 最も顕著なのは、ヘルスケア業界における情報技術、特に AI 技術の適用です。 自動アルゴリズムにより、医療スタッフの作業負荷はタスクごとに最小限に抑えられます。 これにより、お金と時間が節約されるだけでなく、人的資源も節約されます。
1. 医療ICT・スマート医療とは
医療ICTとは、ICTを活用して医療のあり方を変えていくこと。例えば、電子カルテ、人工知能(AI)、遠隔診察(オンライン診察)、デジタル化された検査機器の活用などさまざまな取り組みが挙げられます。
人工知能(AI)はさまざまな業界に大きな影響を与えていますが、その中でも注目度の高い業界が医療です。世界規模での慢性的な人手不足に、高齢化社会における高い需要、医療機器・医薬品への応用による高い利益率、AIの導入に必要な要素がすべてそろっています。そんな医療用AIにはどんなものがあるのかについて、簡単にご紹介していきたいと思います。
2. 医療分野におけるAI活用の現状
機械学習・深層学習技術の発展にともない、ニューラルネットワークによるデータの分析と学習を重ねることでAIは同時の判断基準を構築、分類できるようになりました。医療AIとは、このAIの仕組みを医療現場に取り込んだものです。医療現場では、診断、治療法や薬剤の選択など多くの判断が求められるため、医療AIの導入によって、より正確な判断が下せるようになったり、医療現場における人員不足による業務負担の軽減に役立ったりすることが期待されています。
医療AIの活用
- 臨床診断への活用
- AIを組み込まれたロボットの活用
- 医療データの収集と活用
- 医療現場の(管理)業務の効率化
- 医療の質の向上
- 患者の負担軽減と情報提供
- 健康診断AI
3. 医療ICT・スマート医療:健康診断AIで
AI は避けられない傾向であり、ギャップを埋めるのに役立つ最も強力なツールと見なされています。 一連の新しい AI ツールが開発され、胸部 X 線、マンモグラム、頭蓋 CT/MRI などのさまざまな画像モダリティの分析と診断に適用されています。米国では、一部の AI ソフトウェアが米国食品医薬品局 (FDA) によってライセンスされています。画像診断は、疾患診断の正確性、適時性、および効率性を向上させるために重要な貢献をしてきました。 超音波画像に基づいて、医師は腹部の臓器 (肝臓、脾臓、腎臓、膵臓など) のサイズを比較的正確に測定し、異常な塊があればそれを検出できます。 心エコー画像から、心腔、心臓弁、大血管の構造とサイズを決定することができます。 産科では、超音波は子宮内の胎児の発育を特定および監視するのに役立ちます。 CTスキャナーの画像は、医師が脳内の多くの病気、特に頭蓋内血腫、脳腫瘍を特定するのに役立ちます。 核磁気共鳴画像法は、体内の不規則なパターンと塊をより正確に識別します。
皮膚科に関する情報へのアクセスを向上させる
AI を皮膚科診断に適用すると、プライマリ ケアで最も一般的な皮膚の問題を検出できます。 テスト結果は、正確な患者情報 (画像とメタデータ) を提供すると、人工知能が 26 の皮膚状態を識別できることを示しています。
目の病気を治療する
AI は、網膜スキャンのデータを合成して分析し、黄斑変性症、網膜症、緑内障などの眼疾患を最大 95% の精度で診断できます。 そこから、血管の変化を観察することで、医師は診断を下し、リスクを予測し、患者の最小の変化を検出します。
がんの検出を改善する
研究によると、AI システムは放射線科医と同じ精度でがんを特定できる一方で、偽陽性の数を米国で撮影されたフィルムでは 5.7%、英国で撮影されたフィルムでは 1.2% 削減できることが示されています。 また、AI は、米国と英国の X 線写真の偽陰性の数をそれぞれ 9.4% と 2.7% 削減しました。