2023年の上半期、日本の製造活動はロシア・ウクライナの紛争や、インフレによる物価高騰などの下で行われています。製造業界の全企業の業況は悪化しているが、生産活動および営業利益は回復に転じています。本記事では、上半期において製造業のハイライトをいくつか振り返ってみましょう。
1.業況は悪化している一方、営業利益は向上しつつある
経済産業省が実施した「2023年版ものづくり白書」では、製造業の業況は、2022年上半期から原材料価格の高騰等の影響で悪化し、企業の景況感は低調となっているという。グラフを見ると、2023年の四半期において、製造業のDI指数(DIとは、Diffusion Indexの略語で、景況感や業況の方向感を図るための指数)は2021年から低くなりつつあるようです。コロナ禍の相次いでインフレは、パンデミックを戦うために、内在する力を使い切った製造企業に打撃を与えまました。
ところが、営業利益は2021年から回復に転じ、2022年も増加している傾向があります。
ある程度、インフレに大きな影響を受けた企業が価格転嫁(エネルギー価格や原材料費、人件費などのコスト上昇分を製品やサービスの価格に転嫁すること)を実施することで、値段が過去より高くする製品を販売して、収益が過去に比べて高いようでしょう。同調査によると、原材料高騰分の価格転嫁は、約7割の企業で進んでいるが、高騰分のうち、価格転嫁できている金額は、 50~60%とする回答が最も多いという。
2.生産拠点は中国・ASEAN諸国へ
「2023年版ものづくり白書」によりますと、生産拠点の移転は、特に中国・ASEAN諸国との間で多い。中国については国内への回帰が新規移転を上 回った一方で、ASEAN諸国では新規移転の方が多く見られる (絵3をご覧ください)。
2020年に三井住友信託銀行が行った調査(Link)を基にして、2010 年代以降における日系製造業の ASEAN シフトをもたらした主な要因としては、(1)中国の 国家戦略の転換、(2)日中関係の悪化、(3)中国における労働コストの上昇、の3点が挙げられます。一方、政治的な理由を抜きにしたら、「労働者の量」とか「労働者の質」とか「人件費が国内より安い」とかが主理由になると専門家が言いました。特に、IT投資の面を見ると、その動向がもっと著しくするようです。DX事業(工場のIoT化など)を推進するためのソリューションに投資する費用は高くなるとともに、日本国内より人件費が安い国のIT企業にアウトソーシングをする企業が少なくありません。
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3.製造業の設備投資のうち、脱炭素関連やシステム・DX投資が伸びている
同調査によりますと、製造業の設備投資額は、2020年前半に大きく落ち込んだが、2022年に増加している傾向があります。特に、設備投資の目的の内訳には、2020年に比べて、旧来型の基幹システムの更新や維持メンテナンスが約2.2倍、DX関連(工場のIoT化等)が約2倍、脱炭素関連が約3倍と伸びました。
DX事業に注力する理由として、AIや、クラウド、IoTなどの先端技術を活用することで、生産性向上とコスト削減を両立できることが挙げられます。一方、脱炭素関連に着手する企業の約3割は、脱炭素への取組によるメリットを感じていないが、運用コストを削減するために、DX事業を推進することを決意しました。
4.生成AIをはじめとする先端技術の活用意欲は向上動向
PwC Japanグループが6月15日に行われた「2023年 AI予測調査 日本版」の調査結果によりますと、日本は生成AIといったAI技術の活用意欲は高いことが明らかになった。日本のAI導入済みまたは導入検討中で、売上高500億円以上の企業の部長職以上の331人を対象にした同調査では、50%日本企業は、「全社的にAIを導入」または「一部の業務でAIを導入」と答えました。しかし、同調査は日本においてAI活用に対する課題をいくつか指摘しました。例として、「AIの潜在的なリスクの懸念」とか「攻めリスク、つまりセキュリティー攻撃」とか「AIによるビジネス効果が出ておらず、投資額がはるかに高い」が上げられます。それに対して、外部の専門人材を活用するとともに従業員のリテラシー向上の施策を行うべきだと専門家がアドバイスをしました。
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Source:
1.https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2023/pdf/gaiyo.pdf
2.https://news.yahoo.co.jp/articles/c16e0c6e43b1166c6840c8158a610329eb46b377
3.https://cci-lobo.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2023/06/LOBO202306.pdf