前回の記事では、MaaSの定義及び異なる業種での連携形態を紹介しましたが、今回は、日本におけるMaaSの現状及びMaaS導入事例を挙げながら、MaaSについてより詳細な情報を読者にお届けします。
1. 日本におけるMaaSの現状
日本の運輸業界は、社会経済の変化、高齢化の深刻化、急速な技術開発やモビリティトレンドの高速な変化等に伴う様々な課題の解決に取り組んでいます。本業界の長期的な効率と持続可能性を高めるために、国土交通省(MLIT)、経済産業省(METI)、総務省を代表する多くの日本の政府機関や公的機関はMobility as a Service(MaaS)推進の一貫として、MaaS実証実験事業やMaaSイニシアティブなどを積極的に紹介、投資と支援をしています。
1.1. MaaS市場の大きな潜在力
公共交通機関が高度に発達し、移動の需要も高い日本は、世界最大のMaaS市場の1つと見なされています。富士経済が2020年に発表したMaaSの日本国内市場調査結果によると、MaaS市場は2019年の8,673億円(見込み)から、2030年には2兆8,658億円まで拡大すると予測しています。この数字は、モビリティ市場の一部のサービスに制限されており、他の分野にも拡大すれば今後はさらに増加する見込です。
1.2. MaaSの統合度合いについて、いまの日本は「レベル1」の段階
世界では、MaaSは各移動サービスの統合の程度によって5段階にレベル分けされています。
2019年に発表されたみずほ情報総研レポートによると、日本はレベル1「情報の統合」を既に実現しているということです。一方、MaaSレベル2とレベル3が一部の取組で実現されているということが指摘されます。
レベル2「予約・決済の統合」に向けて、企業は自社の顧客へMaaSの実証実験を積極的に実施しています。しかし、新型コロナウイルスの流行は、全体的に多くの企業のMaaS展開に大きな影響を及ぼしいるため、高レベルMaaSが生活に本格導入するまではもう少し時間がかかるでしょう。
1.3. 日本版MaaSについて
「日本版MaaS」を定義するには、国土交通省は次の4つの核心要素を挙げました。
・事業者間のデータ連携
・運賃・料金の柔軟化、キャッシュレス化
・まちづくり・インフラ整備との連携
・新型輸送サービスの推進
人口密度が高く、公共交通が諸外国と比べて高度に発達している日本の都市部では、消費者需要に応じた独自のモビリティサービスが複数できあがっていると言えますが、課題としてはどのようにMaaSをこれらのサービスに組み込んでいくかです。一方、地方部では路線バス事業者の多くは売上が赤字で、運転手が不足しているという現状があります。
5Gサービスの開始やビッグデータの活用といった技術の進歩と相まって、日本版MaaSは上記のような課題を解決するとともに、サービス事業者に大きなビジネスチャンスを作り出し、巨大な収益を生み出すことが期待されています。
2. 具体的に日本ではどのようなMaaSの取り組みが行われているのでしょうか。
2.1. トヨタのMAAS開発:「e-Palette」
2018年1月、トヨタ自動車は、自動車メーカーから、人々の様々な移動を支えるモビリティの会社への変革を宣言するとともに、「e-Palette Concept」を発表しました。 e-Palette Conceptは電動化、コネクティッド、自動運転技術を活用して「Autono-MaaS」を具現化する存在です。
オリンピック・パラリンピック競技大会のワールドワイドパートナーであるトヨタ自動車は、選手村内巡回バスとして、選手や大会関係者の移動をサポートするトヨタ初の電気自動車「e-Palette」を提供しました。
2.2. 小田急のMaaS取組み
小田急電鉄は2018年に発表した中期経営計画において、「次世代モビリティを活用したネットワークの構築」を掲げました。自動運転バスの実用化に向けた取組みに加えて、小田急は「小田急MaaS」を通じて1以上の目的地までの移動と、そこで楽しめる各アクティビティの提案から予約・決済までシームレスに利用者にワンストップサービスとして提供することを目指しています。
MaaSの実用化のために、小田急はヴァル研究所と共同で、鉄道やバス、タクシーなどの交通データや、フリーパス・割引優待等の電子チケットを提供するためのデータ基盤を開発しました。これは、検索から予約・決済までの機能を提供し、MaaSアプリケーションの普及・拡大を後押しする主要な要素となる日本初のオープンな共通データ基盤です。小田急は公共交通の分野において、多様な移動需要に対応可能なスーパーアプリをはじめ、新しいモビリティエコシステムを開発することを目標として取り組んでいます。
3. WILLERSのMaaS事業:Mobi
WILLERは地域の交通問題の解決に重点を置いて、2021年に自社のMaaSソリューションとして、「mobi」というオンデマンド交通サービスを立ち上げました。 「mobi」を通じて、利用者が自宅から2kmの生活圏内の移動サービス初めて使えるようになりました。
「mobi」を使うことで、家族の車台数を減らしながら、必要な移動が手軽にできます。 また、AIルーティングにより、道路状況などを考慮して、安全で時間の節約になる最適なルートを提案し、利用者に最高の体験を与えることができます。
WILLERは地域が抱える交通問題に目を向け、家族やコミュニティとの交流を深めるモビリティサービスの提供を今後とも目指していきます。
同社は運輸業界及びMaaSモデル開発におけるVTIの主要なパートナーの1つです。WILLERは2018年からVTIと協力し始め、日本と東南アジア諸国で輸送モデルを実装しました。目立つプロジェクトとしては、ASEAN高速バス事業、Car Clubなどを挙げられます。 そこに留まらずに、2021年には、両社はお客様の体験の更なる向上に向けた「mobi」案件に協力し続きます。
まとめ
MaaSはまだ新しい市場であり、企業にとって解決すべき課題が潜在しているものの、大きなチャンスを与えることは間違いないでしょう。日本では高レベルMaaSを実装するプロジェクトは、今やまだ実験段階にありますが、官民の取り組みを受けて、次世代技術とモビリティサービスの組み合わせにより、MaaSの明るい未来を期待できるでしょう。
参考種類:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000040416.html
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/34527255.html
https://dcross.impress.co.jp/docs/usecase/000982.html
https://www.willer.co.jp/business/maas/