ロイヤリティプログラムは、企業の収益を増やしながら、顧客ロイヤルティを向上するのに最も効果的な戦術の1つであることが証明されつつあります。プレミアムロイヤルティプログラムの提供・導入支援を行うClarus Commerce社が行った「プレミアムロイヤルティデータ調査2021」によると、ブランドのロイヤリティプログラムに満足しているなら、消費者のほぼ90%は、競合他社がより低い価格を提示するにもかかわらず、そのブランドを選ぶ傾向が高いという結果も出ています。
ロイヤリティプログラムは、特に小売業界や食品・飲料業界にとって、新しい概念ではありません。今までポイントベースのプログラム、階層型ロイヤルティプログラム、非金銭的プログラム、提携ロイヤルティプログラム、有料–VIPロイヤルティプログラム、キャッシュバックやゲーミフィケーションなど様々なタイプがあります。この数年、顧客ロイヤリティの向上に重点を置き、ロイヤリティプログラムを改良するために既存の形式を変えたり、新しい方法を作り出したりすることに取り組む小売業者が増えつつあります。
本記事を通じて、VTIはロイヤリティプログラムの定義及びそのメリット・デメリットについてご紹介します。
ロイヤルティプログラムとは?
世界No.1の顧客管理・営業支援システムを提供するSaleforceの定義によると、ロイヤルティプログラム(Customer loyalty program)とは、企業が一定期間で継続購入またはサービス利用してくれた顧客に対し、実績を認めて報酬を与えるマーケティング施策のことを意味します。これは、企業の販売活動でのプロモーションや特典のプログラム等を通じて顧客からの好感と信頼、つまり顧客ロイヤルティを向上し、顧客を引き付けることを目的としたインセンティブ・報酬付与です。またロイヤルティプログラムは、企業が報酬を提供することを通じて得意客に感謝の気持ちを表する方法とも見なされています。
銀行、エンターテインメント、ホテル、小売、観光などのサービスのマーケティングキャンペーンを見れば、ポイントカード、リワードカード、会員カード、ロイヤル顧客カードなどを発行してロイヤルティプログラムを実施するケースが少なくありません。これらのカードは、クレジットカード・デビットカードと似てる物理的なプラスチックカードの他、カード名義人をロイヤルティプログラム会員として識別するデジタルカードも使われます。
ロイヤルティプログラムの一環として、ロイヤル顧客カード(物理とデジタルの両方)の所有者はカードを提示することだけで、当時の取引に対して即時に割引・ギフトなどを取得したり、カードの利用限度を引上げたり、グレードアップしたりすることができます。また、ポイントを貯めて将来の取引に使ったりする選択肢もあります。
ロイヤルティプログラムの成功事例といえば、直ぐに頭に浮かぶのは、世界で非常に有名なコーヒーチェーン店であるスターバックスにより実施された、同社のスターバックスリワードの会員向けの「Starbucks for Life」というイベントでしょう。このイベントに参加する人は、1か月又は1年間、さらには最大30年間で毎日1つの飲み物または食べ物を無料で獲得することができます。参加者数は、スターバックスの米国市場だけでも、2019年には1700万人に達し、前年比15%増加しました。このイベントでは、スターバックスリワードがレストラン業界で最も注目されるロイヤルティプログラムとなりました。
ロイヤルティプログラムを導入すべき理由
ブランド構築、顧客満足度向上、収益アップを図るには、顧客を引き付けて忠実な顧客に育てるのは重要であることはいうまでもないでしょう。なぜならば、消費者の大分は、慣れ親しんだブランドにお金を使って、大きなコンバージョンをもたらす傾向があります。 そのうえ、これらのロイヤル顧客は肯定的な口コミを、友人や同僚に直接、またはSNS上で発信してくれます。これによって、ブランドが広く知られ、広告・宣伝にお金を使わなくても新規顧客を獲得できます。
ベイン・アンド・カンパニー社のフレッド・ライクヘルド氏が発表した研究によれば、新規顧客の獲得には既存顧客の維持よりも5倍から25倍のコストがかかります。また、調査によると、既存の顧客は新規顧客より67%多く支出することも示されました。これらの数字を見れば、企業の利益を上げるにはロイヤルティプログラムは最適な方法であることは明らかではないでしょう。具体的には、ロイヤルティプログラムのメリットは以下のように挙げられます。
- 収益・利益・限界利益率を向上する。
- あらゆるチャネルで顧客エンゲージメントを高める。
- ブランド認知度・評判を積極的にアップさせる。
- NPS(ネットプロモータースコア:顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を測るための顧客推奨度の指標)を上げる。
- RFM分析に豊富なデータを提供し、分析効果を高める。
- チャーンレート(解約率)を下げる。
- マーケティングコストを低減する。
- 無料広告・宣伝(口コミなど)でブランドの評判を高め、直接顧客にアプローチできる。
ブランドの選択肢が増えつつある中、ブランド価値を高めるには、優れた製品や良質なマーケティング戦略にとどまらず、さらに顧客との緊密な関係を築くことも必要があります。顧客のニーズを満たす印象的な商品に加え、上質な顧客サービスを持っているなら、顧客は長い間付き合ってくれるはずです。
ロイヤルティプログラムを検討する必要がある企業は?
以下に相当しないなら、ロイヤルティプログラムを作成することを検討すべきです。
- 他の選択肢がない独占商品・サービス
- 日常生活に必要不可欠なライフラインの商品・サービス(電気、水道など)
- 一定の顧客基盤が形成し始め、提供している商品から利益が生み出せた段階
ロイヤルティプログラムのリスク
前に挙げた多くのメリットの一方で、ロイヤルティプログラムには以下のようなリスク・デメリットも存在します。
- 実装の統一性及び長期的なビジョンがないと失敗する可能性が高いである。
- プログラムを維持するためにある程度の技術的リソースが求める。
- ロイヤルティプログラムはマーケティング施策として定義されているが、期間を限定するマーケティングキャンペーンと違い、顧客を維持するために長期投資を必要とし、プログラムを定期的更新しなければならない。
これらのリスクを避けるためには、企業の営業活動に適したロイヤルティプログラムをしっかりと検討し、正式に実施する前に、小規模で特定の顧客対象に試しの期間を設ける必要があります。
まとめ
ロイヤルティプログラムは優良顧客の育成に重要な役割を果たすのは間違いないですが、企業のすべての課題を解決できる「魔法の杖」ではありません。これは、ただ「いつも格別のお引き立てを賜りありがとうございます。今後も変わらぬご愛顧賜りますようお願い申し上げます」の感謝メッセージを企業から顧客に伝えることで、顧客の信頼を獲得し、自社の商品、サービスを引続き使っていただくようにする方法です。
次回は、ロイヤリティプログラムを効果的に作成するための鍵についてご紹介しますので、ぜひそちらもご覧ください。